スタッフインタビューStaff Interview

作曲家から見た幻調乱歩

     

作曲 水流ともゆき

水流さんご自身のことからお聞きしたいと思います。作曲はいつ頃始めたんでしょうか?

中学からです。子供の頃から怪獣、特にゴジラが大好きで、ビデオカメラで撮った映像に合う音楽を作ったのがきっかけでした。漠然と映像を作りたいって思った時の自然な流れとして、映像と音楽はセットで考えていて。本当は全部やりたかったんですけど、CGで怪獣を作るか音楽を作るか、どちらかを趣味にしたいなと思って最終的に音楽を選んだんです。
曲を作る時は、まず自分でオリジナルの怪獣のストーリーを考えて、それを音楽で表現するという風にやっていて。初期の頃は怪獣の音楽ばっかり作ってました(笑)それから、友達にバンドへ誘われるようになったり、歌の作曲家のオーディションにデモテープを送ったりと音楽の制作が広がっていきました。

水流さんにとって、映像と音楽は一体のものだったんですね。

映像音楽って、映像自体を語るようなドラマ性を持っているんですね。もともとクラシックが好きだったんです。そこからオーケストラを使った音楽を巡るうちに、母から映画音楽っていうのがあるよって教えてもらって。『スター・ウォーズ』のような映画音楽をラジオとかで聴いていたことも伏線としてあったのかもしれませんね。

ちなみにクラシックでお好きな作曲家は?

ショスタコーヴィチさん。没後50年ですね。最初はかっこいいなという気持ちから入ったんですが、ゴジラとか怪獣音楽もそうなんですけど、色々な旋律が混ざらずに同時に動いて一つの曲になるポリフォニックな表現が特徴的で、たぶんそういう音楽が好きなんでしょうね、。それから、生や死を考察させられるような深い精神性のあるサウンド感が好きなのかなと思っています。

そういった点が曲作りにも影響していたんでしょうか。少しご経歴について教えてください。

最初は自主制作映画の楽曲提供からスタートしました。本当はSFがやりたかったんですが、なかなかSFはなくて(笑)、ジャンル問わず幅広く取り組んでいました。ドラマチックな演出が得意でよくやらせて頂いていましたね。アメツチの安藤さんとも最初はそういった撮影の現場で知り合ったんです。劇団を立ち上げられて、おそらく、音楽を気軽に頼めるというところで、僕に依頼が来たのかなと。

怪獣音楽に始まった曲作りが、映画や舞台のお仕事に繋がっていったんですね。
さて、今回の『幻調乱歩4』の曲作りはどんなイメージで作っていますか?

台本を読んで、これまでの登場人物たちの立ち位置がガラッと変わるドラマだなと思いました。まずは前作までの音楽をどう活かしていくのかについて、結構考えましたね。主軸だった明智小五郎さんとシャオリンさん、それから、二十面相や姫宮博士といった人物たちも、これまでの関係性を超えてどんどん混じり合いながらドラマが展開していきます。こんなキャラクターだと思っていたのに、それが少しずつ変わっていく……という過程を音楽でも表現したくて、同じメロディーでも聴かせ方を変えています。今回はメインテーマを含めて40曲近く作りました。台本をもらって1週間で集中して取り組んでいて、今は第一段階の打ち込みが終わって、これから演奏者用の楽譜を作るところです。

音楽面で、前作とは違う変化はありましたか。

まず、今回初めてDJが加わります。DJさんを介して、これまでの編成(ピアノ、ドラム、ベース、サックスの4つの楽器)以外の音色も加えた曲を作れるようになりました。
それから、曲作りでも変化があって。楽曲の構成について細かくコントロールが効くようになったので、例えばこのタイミングでこの音を鳴らすという時に、伏線としてどんな音があればいいんだろうとか、良い意味で考えることが増えました。自分にできることがどんどん広がって、昔手がけていた映画音楽に近い、より世界観に引き込む演出ができるんじゃないかなと思っています。

安藤プロデューサーから曲作りについて、何かこうしてほしいというお話はありましたか。

安藤さんから細かいことはあまり言われていなくて、例えば、脚本の進行状況が遅れた場合は、僕に「巻き」でお願いすることになるよ、という予告くらいです(笑)。
ただ、安藤さんはエモーショナルな体験を大切にした舞台設計をされていると感じていて、僕自身その辺りは意識しています。観客目線で作品を観た時に何が残るのか?音楽の印象を残すというよりも舞台体験としてどういうものを残したいのか?ということですね。脚本の奥にある演出家さんの意図も読んでいますが、やはりそれ以上に、感情的な表現に関しては力を入れるようにしています。

観客目線を踏まえた曲作りというのは、具体的にどんな感じなんでしょう。

この作品は、荒唐無稽なお話というのが醍醐味なんですが、お客さんにまずはその世界に入ってもらわないといけないなと思っています。『幻調乱歩』シリーズには人間以外のキャラクターも登場するんですけど、そもそもその設定にお客さんが引いてしまったらダメなんです。そういうシーンでリアリティを持って感じてもらえるかというのは、声優さんの演技に加えて音楽が果たす役割も大きいと思っています。

世界観に没入してもらうというところを工夫しているんですね。

音楽は感情に訴えかけやすいので、例えば、次に驚く場面があった時、驚きがどの方向に向かうか、音楽でも誘導していくことができると思っています。例えば二十面相が登場するシーンでは、その伏線として二十面相の存在を感じさせる音楽を流したり、次はこんなことが起こりそうだという観客の予想をデザインするような役割を担っているつもりです。

『幻調乱歩4』では電人が登場しますが、音楽ではどう表現を?

そこが一番大きいポイントで。シンセサイザーの音色を取り入れています。それも昔の自動演奏のようなイメージで規則的な音を鳴らしたり、ドラムも電子音や金属音を使ったりと、かなり変わりましたね。
物語のダイナミックな展開に合わせる音楽は、映像音楽の技法なんですけど、場面展開に合わせて曲調を変化させるフィルムスコアリングのやり方を応用して作っています。『スター・ウォーズ』でもそういう作り方をされていますね。元々アメツチさんの舞台音楽ではその辺を拘ってやってきたんですけど、今回の『幻調乱歩4』ではこれまで以上に本格的に取り組んでいますので、楽しんで頂きたいです。

今回も、門田"JAW"晃介さんを中心とした、電装四重奏団の生演奏が聴けますね。

門田さんのサックスは歌うようにすごく綺麗で、旋律の在り方を深く解釈して演奏をされていると感じました。あと実は、前回の『3』以降個人的に門田さんのライブに2回伺って、門田さん自身がどんな音楽をしたいのかをリサーチしていました。今回の幻調乱歩4のオープニング曲は門田さんにも絶賛して頂けたんですけど(笑)、シンセサイザーも駆使してジャズを進化させたような、“インテリジェントな音楽”をキーワードにしました。ジャズって、演奏家ありきの音楽なんです。個性を競い合うというか、ピアノにしてもベースにしてもみんな弾く音やフレーズに個性があります。だから、門田さんに限らず毎回演奏家の皆さんの音楽性は事前にリサーチして、個性を発揮されたときにどんな曲になるかを意識して作っています。

脚本を読んでみて、どんなイメージで曲作りをしようと思っていましたか。

細川さんは空想的というか、夢想のような映画的な脚本を書かれるなと思っています。この前、別の舞台を拝見しても感じたんですが、演劇よりも映像に近いスピード感の展開で観客を引き込んでいくような印象がありました。音楽的にいうと、そのテンポ感にどう追従するのかというのは結構大変なところもあって。全体としてストーリーをどの筋に持っていこうとしているのか、先読みした音楽の付け方を心がけています。
『幻調乱歩4』では脚本に合わせて一つ一つの曲を作る形なので、その展開に対して観客目線の責任を負っている感覚です。細川さんの脚本の展開の面白さとスピード感にちゃんと入り込めるように努力中です(笑)。

朗読劇に生演奏を組み合わせたのが『幻調乱歩』の魅力ですが、映画音楽とは違いますか?

よりしんどくて大変ですね(笑)というのも、映像の場合、まずは視覚から入りますから、そこで説得した上でのサポートとしての音楽という位置づけです。でも朗読劇は完全に音だけになるので、視覚的な演出をする代わりに音楽だけで表現する部分も多いので、ずっと台本を読みながら曲作りをしていますね。声優さんの読むテンポを予測しながら作っています。大体この展開に何秒でたどり着いてここでこんな音がほしいな、とか。タイミングがずれた時にも変にならないように先読みして作るという点が、結構大変です。
今回はDJが入って曲構成の自由度が高くなりまして、よりできることが広がった分ありがたいくも大変になりましたね。

大変な中でも、こだわって音楽を作っている理由は。

演劇や生の朗読劇でフィルムスコアリングに近いことをやることで、没入感が生まれてお客さんが感情移入しやすくなって、舞台体験への満足感が劇的に変わっていきますね。ちょっとしんどくても、そこはこだわりを持ってやっていきたいです。

少し大きな話になりますが、『幻調乱歩』シリーズが他の舞台作品と違うところは、どこだと思いますか?

これまで様々な舞台を観に行かせてもらいましたが、荒唐無稽な話だからこその没入感に対するこだわりは一番大きいんじゃないかと思います。作品の世界観をちゃんと立体的に見せられるかどうかっていうところへのこだわりですね。幻想の世界にリアリティを感じさせられる……というのは大きいですよね。前回の『幻調乱歩3』を客席で観て感じたんですが、声優さんの演技、そこにシーン展開に寄り沿ったジャズという音楽の聴こえ方も含めて、面白いんじゃないかなと思いました。僕が担当させてもらう前の時期も含めて、一貫してこのシリーズの魅力だと思います。

『幻調乱歩4』では、特にどの場面の音楽を聴いてほしいですか。

クライマックスのシーンは見どころであり聴きどころです。ネタバレになるのであまり詳しく言えないんですが、本当に“怪獣音楽”……僕の趣味が結実した音楽になります(笑)ぜひ楽しみにしていてください。

あまり舞台作品を観たことのない方にもぜひ鑑賞して頂きたいですね。

そこについては常々考えていて。僕自身が『幻調乱歩3』の客席で実際に聴いてみて感じたのは “コンテンツとしての魅力”で、想像を上回る没入感がありました。小説を読む方も多いと思うんですけど、小説は文字を読みながら頭の中で物語を膨らませ、絵にして読む……という感じですが、それよりももっと、説得力のある生演奏の音楽とかいろんなものが立体的に立ち上がって頭の中に入ってくるんです。気楽に聴いているうちに、幻想的な世界に入り込んでいけるというのはこの作品の良いところだと思います。何より、声優さんの演技が圧倒的にすごくて。現場で聞くと迫力が全く違うんですよ。テレビとかを介して見聞きするものとは全く違うライブな雰囲気があります。そんな雰囲気を感じられる場としても劇場をお勧めしたいなと思います。


ありがとうございました。


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